TRIPOD職員の会話

Tripodのオフィスにて、上司Bがデスクで仕事をしている。職員Aが書類を持って扉をノックする。

上司B:どうぞ。あいてるよ。

職員A:失礼します。実はちょっとご相談がありまして・・・。

上司B:相談?なんだい?まあ掛けてくれ。昇給には応じられんぞ。あと仲人も。

職員A:いや、我々のビジネスについてです。

上司B:ビジネスについてか。それなら歓迎だ。

職員A:実は、最近の業績伸長の停滞が気になって・・・・。最近の他のプロバイダを見てみると、結構な容量を無償で提供していますよ。うちの2メガなんて、最低レベルです。

上司B:そんなこと言ってもディスクの容量に余裕がないだろ。

職員A:でも現に10メガ提供している所があって、そっちのほうが、人気ありますよ。うちに比べるとつながりにくいのは、回線のせいだけではないと思います。無償のHP用スペース提供なんて、人寄せパンダみたいなもんですから、人がよってこないと意味がありません。

上司B:そうだよな。ただのHPだけじゃ、俺達飯食えないもんな。ただのものを利用しているうちに「もうちょっとこんなサービスがあればいいな」とユーザに思わせ、すかさずその足りないサービスを有料で提供する。これが基本だよな。この「ユーザが使いたくなるけど、機能は不完全」というものを提供するのが難しい。

職員A:ええ、そうです。もっともこれはマイクロソフトのインターネットエクスプローラーのやり方を真似てるだけなんですけど。

上司B:そんなことはいいんだよ。ビルからクレームきてないだろ?

職員A:その気になれば、「我々のホームページにだけつながらなくなるような修正プログラム」を配布できますからね、彼らは。

上司B:ああ、そうだな。って、もしや最近人気ないのはそのせいか?

職員A:いえ、まだつながることは確認済みです。それにネットスケープもありますし。

上司B:よかった。今首になると家のローンが払えなくなる。

職員A:つまり一言で言うと、我々の商売は、限界収穫率が逓増するものなんですよ。

上司B:なんだそれは。経済学の基本と違うじゃないか。我々が学生のときは限界収穫率は逓減する、って教わったぞ。収穫量がふえると追加的生産物の人気が減るはずだからな。だいたい逓減しないと均衡しないじゃないか。

職員B:均衡しないモデルなんです。現状の経済にマッチしていないでしょう、均衡モデルって。詳しいことは複雑系でもお読み下さい。

上司B:ふん、理屈はいい。それで君はこの状況を解決するいいアイデアを持っているのかね?単に問題を提示するだけでは、アメリカでは出世できんぞ。

職員A:ええ、もちろん。問題をロジカルに考えればいいんです。イシュー:我々がフリーで提供できる1メンバーあたりのディスク容量を仮に2メガから5メガにする。ただし、全体の容量は変えない。どうすればよいか?アンサー:・・・・

上司B:不可能。

職員A:それでは零点です。答えは、メンバー数を減らすです。

上司B:ああそうか。って、ちょっと待て。メンバー数は減らせないだろう。さっきの前提と反するし、第一どうやって減らすんだ?

職員A:前提には反しません。メンバー数を一時的に減らしてもその後激増する方策を採るのですから。大事の前の小事です。革命のために犠牲は付き物です。

上司B:過激だが、一応よしとしよう。で、方法はどうする。こっちも過激にやるか?「ゴメーン、全部消しちゃった」とかいって。しかし、待てよ、最近日本のプロバイダー本当にそんなミスしていた所があったぞ。業界紙の月刊「プロバイダーの友」とかにも出ていた。一部のメンバーのホームページを消したとかで、その被害にあった会員に特別に容量1メガプレゼントとかしていた。あきれるな日本人には。

職員A:ええ、その方法では当初の目標にも反してます。やっぱり零点。

上司B:それじゃ、そろそろ解答を出してくれ。

職員A:答えは、これです。(といって一枚の紙を出す)

上司B:これは、Terms of Service。うちのホームページのご使用条件だな。これが何か?

職員A:かいつまんで言うと、我々の方針に合わないホームページは我々のビジネスに有害だと言って、いつでも勝手に消すことができ、メンバーシップもキャンセルできるんです。さらにはホームページだけならいつでも消し去る権利があります。

上司B:そうか、その手があったか。

職員A:ホームページの内容をすべて読んだ上で内容を吟味するのは大変で時間がかかりますが、画像は比較的簡単です。見てみて、乳首や性器が写っていれば機械的にはじき出せます。これなら、時給の安い「頭の悪そうな高校生」や「英語のできない外国人」を大量に雇って、短時間でチェックすることが可能です。私の見積もりでは、3件に2件はこれで消去できると思います。

上司B:グッドアイデアだ。OK。了解した。すぐに掛かってくれ。あ、いや1時間待ってくれ。

職員A:1時間?なぜです?

上司B:私のページからそういったコンテンツを引き上げるに必要なためさ。(笑)

業績が苦しいかどうかは知りません。

Disclaimer
ドジった日本のプロバイダの話以外は、まったくのフィクションです。実在の個人、会社、団体、製品その他との名称等の一致は単なる偶然です。

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